50歳で脳梗塞になった友人との話【実話】
先日、友人が脳梗塞を起こし入院したとの連絡を受けました。発症時、幸いなことにそばに人がいたため、すぐに救急搬送されたので、後遺症も軽く現在リハビリ中です。その友人から話が聞けたので、シェアしたいと思います。
脳梗塞は発症後なるべく早く治療することが重要
私の友人の場合、脳梗塞を起こした際に、すぐそばに知り合いがいました。そのため、異変に気付いた知り合いがすぐに救急車を呼び、友人はすみやかに病院へ搬送されました。
そのため、超急性期(4.5時間以内)にのみ受けることのできる、t-PAによる治療を受けることができました。t-PAによる治療とは、血栓を溶かす薬「t-PA」を使った治療のことです。
超急性期にt-PAを使った治療を受けることで、つまった血管を再開通させることができるため、その後の症状を劇的に改善させ、後遺症によるダメージを受けにくいというメリットがあります。
友人も「すぐに病院へ運ばれ治療を受けれたのがラッキーだった」と言っていたように、脳梗塞の発作が起きた場合は、迅速な初期対応こそが最も大事なのです。
脳梗塞の発作が起こると、脳は数分で脳細胞の壊死が始まります。時間が経つほどにダメージは大きくなり、ひどい後遺症が残ったり、場合によっては命を落とすことにもつながります。
脳梗塞の発作が起きたらすぐに119番に電話して救急車を呼ぶことを忘れないでください。迷ったり躊躇している場合ではありません。日本人は「恥ずかしい」と思いがちのようですが、脳梗塞の発作が起きた場合は、恥も外聞も捨て即行動です。
一人の場合でも119への電話はあきらめずないでください。仮に話ができなくなってしまっていたとしても、場合によっては住所を突き止め救急車が迎えに来てくれます。
わりと多い若年性脳梗塞
脳梗塞を起こした友人が入院して、まず思ったことは、意外と若い患者が多いということだそうです。
友人は50歳になったばかりで、一般的にも脳梗塞の発作を起こすのは50代以上が多いと言われています。
というのも、脳梗塞の主な原因は動脈硬化が多いからです。50代くらいになると、肥満や高血圧、脂質異常症などにより動脈硬化が進み、結果的に脳の血管が詰まったり、血栓ができることによる脳梗塞が起きやすくなります。
つまり、高血圧などの生活習慣病として現れる50代以降は脳梗塞のリスクが高いということです。
ところが最近では若い人の脳梗塞が増えていると言われています。45歳以下の若い世代に起きる脳梗塞のことを「若年性脳梗塞」といい、いまこの若年性脳梗塞が増えているそうです。
友人が入院している病院では、40代前半ならまだしも、30代や、場合によっては20代の患者もちらほら見かけると驚いていました。
ただ、若年性脳梗塞は、50代以上が起こす脳梗塞の原因とはまた少し違った原因で起こるようです。その典型ともいえるのが、「抗リン脂質抗体症候群」や「奇異性脳塞栓症」、「もやもや病」だといわれています。
これらはいずれも脳に血栓ができやすくなる病気なのだそうです。いわゆる一般的に起こる脳梗塞と区別する意味でも、これらの病気から起因する脳梗塞のことを「若年性脳梗塞」と呼ぶのだそうです。
3つのリハビリ
脳梗塞を起こし入院すると、体の機能を回復させるためのリハビリが待っています。友人も毎日リハビリを行っていると言っていました。
リハビリは「理学療法」「作業療法」「言語療法」の3種を行います。
「理学療法」とは、理学療法士(PT)が担当し、起きる・立つ・座るといった基本動作に加え歩行訓練などのリハビリです。
「作業療法」とは、作業療法士(OT)が担当し、着替え・入浴・料理など日常作業から、仕事をするような動きまでの身体機能の回復のためのリハビリです。
「言語療法」とは、言語療法士(ST)が担当し、文字通り、聞く・話すに加え、物を飲み込む(嚥下)に関するためのリハビリです。
私の友人は、幸い症状が軽かったため、首から上の機能には障害が出ませんでした。なので言語療法は必要としないようで、私ともパソコンのカメラ越しに普通に会話ができていました。
たいてい脳梗塞を起こすと、左右どちらかの半身がマヒ症状を起こします。場合によっては片目が見えなくなったり、顔が左右で動きが異なり、片側の口が思うように動かないといった症状が出たりしますが、友人の場合はそういった症状はありませんでした。これもすぐに病院へ搬送され、超急性期にt-PA治療を受けたおかげといえるかもしれません。
リハビリテーションの今後
友人は言語療法以外の理学療法と作業療法のリハビリを日々受けているわけですが、理学療法を受けるにあたり自分の足の形に合った下肢装具を作ったといって見せてくれました。
下肢装具は重度脳卒中患者の場合、長下肢装具(KAFO)というつま先から太ももまであり、膝の関節部が稼働する大型の装具を作ります。
長下肢装具を使ってのリハビリが必要となる場合、やはり重要なのは膝折れ(膝カックン)を防ぐ歩き方によるリハビリ方法となります。
この場合、長下肢装具の膝関節部分を固定し、曲がらないようにすることで膝折れを防ぎつつリハビリを行うため、どうしても足をぐるっとコンパスで円を描くような歩き方(いわゆる「分回し歩行」)になってしまいます。
これまではこの分回し歩行によるリハビリが一般的でしたが、若年性脳梗塞など若い世代での脳梗塞も増えたと同時に、定年が伸び労働人生が延長されたことから、歩容を意識した新たな歩行リハビリ法に注目が集まり始めています。
つまり、膝を曲げて歩くようになるためのリハビリ方法です。
これまでは不可能と言われていた脳卒中患者の足を曲げて歩くリハビリを行うための環境が、長年の研究によりいま整い始めてきています。
それは「GS Knee」という長下肢装具に装着して使用する器具を使ったリハビリです。大学の研究室、リハビリ病院、化学メーカー、ロボット開発企業が長年共同で研究を重ね、ついにいくつかのリハビリセンター病院で使用が開始され始めました。
このGS Kneeについて、脳梗塞を起こした友人の意見を聞いてみたところ、非常に高い関心を示していました。
まだ使用できる病院は少ない状況にありますが、場合によっては退院後、さらに自発的にGS Kneeを用いたリハビリを行っているリハビリセンターなどに通い、歩容を高めるといった選択肢もありうるとのこと。
リハビリの歴史はこの20年くらい止まっていたかのように、おしなべて分回し歩行によるリハビリが一般的な方法でしたが、2021年からは膝を曲げて歩くための新たなリハビリ法がスタンダードとなる日も近いように思えます。
おそらく徐々にGS Kneeを導入する病院も増えてくるでしょうから、搬送された病院のリハビリがこのGS Kneeを使ってのリハビリを行う病院であるなんていうことも近い将来ありうるでしょう。
医療の発展に伴い、万一脳梗塞が発症した場合でも、なるべく元の生活に近い状態まで回復できるリハビリがある。そうなったら、100年時代の労働人生も少しは明るい気持ちで過ごせるかもしれません。
脳梗塞を起こした友人とZOOMというWeb会議システムを使って、このような話を対面でさせていただきました。
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